おばばのブログ

2022年中高一貫校へ進学。大学受験(2028年)。東進スーパーエリートコース受講中

歴史を流れで把握する方法(点と点が線になる 日本史集中講義:井沢元彦)

今回は、日本の歴史を「流れ」で把握する方法についてです。

 

中学受験で日本の歴史を勉強するわけですが、科目としての歴史は「暗記科目」、「年号や当時の出来事、制度についての事実を覚える科目」とのイメージがありますよね。

 

ところが、これこそが歴史教育の最大の問題であり、歴史は流れで把握する必要があるのに、プロの歴史学者や学校での教え方は、「線」ではなくて、「点」で歴史をとらえる方法となっていることに強い疑問を感じて、

 

「日本史集中講義 点と点が線になる」

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を書いたのが井沢元彦さんです。

 

TBS在籍中に、「猿丸幻視行」で江戸川乱歩賞を受賞し、歴史関連の作家として活躍されている方です。

 

ピヨ太が塾で歴史を勉強するのを見ていても、暗記事項がほとんどです。

 

つねづね、歴史を流れで把握できれば、個々の事項が有機的につながって、暗記した内容も忘れにくいのでは、と思ってました。

 

ところが、自分も歴史が得意ではなくて、小学校以来の学生生活で、歴史を点と点で覚えるだけで、しかも、なかなか覚えられないので、点と点の距離がかなりある、スッカスカの点の並びになっています。

 

そして、そんな状態から進歩がとまった状態で大人になってしまったので、ピヨ太に、歴史を流れで教えたいと思いつつ、あきらめていました。

 

そんな中、この「日本史集中講義」が目に入りました。

 

ネットで情報を集めてみると、冒頭に書いたような、正に、歴史を流れで把握する本であるとのこと。

 

早速購入して読んでみました。

 

結論から。

 

中学受験生の親の方には、一刻を無駄にすることなく、この本を読んで、ポイントをお子さんに伝えることをお勧めします。

 

特に出色は、

○2章「中世 朝幕府併存の謎を解く」

○3章「近世 信長・秀吉・家康は日本をどうかえたのか」

です。

 

1章は途中でやめてもいいので、2章、3章は本当におすすめです。

というか、歴史に関心が無くて、知識も小学生レベルで止まっている自分が、本当に面白く読めました。

 

前書きの内容は良いのですが、表現が過激で、「今の歴史教育は問題」と言っているので、ちょっと偏ってないのかなあ、と心配になりましたが、結果、読んで本当に良かったです。

 

作者は政治的な歴史観や歴史問題に関心ないわけではないのかもしれませんが、読む方で、「歴史を流れで把握する」との点に集中すれば、全く気になりません。

 

また、学問的には、本書の内容に議論もあるのかもしれませんが、おばばとしては、小・中・高時代に、この本を読めば歴史が好きになったかも、と思いました。

  

実際に読まないと、良さが伝わらないと思いますが、内容のポイントを紹介してみたいと思います。

日本史集中講義 点と点が線になる (祥伝社黄金文庫) [ 井沢元彦 ]

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感想(8件)

【2章「中世 朝幕府併存の謎を解く」】

 

平安末期に武士の誕生、荘園が増えた理由、源頼朝が武士の心をとらえた理由などについてです。

 

[治安の悪化]

平安時代は、794年に平安京に都が移ってから、鎌倉幕府ができるまでの約400年の間です。

 

平安京が政治の中心だったことから、平安時代と呼ばれるようです。

 

それまで争いの時代を踏まえて、「平安」な時代がくることを希望して、平安京との名前になったようですが、実際に、大きな戦乱もなく、比較的平和な時代だったようです。

 

平和な時代だったので、だんだんと軍備の縮小・廃止が進みました。

当時の律令政府では、兵部省(防衛省のようなもの)、刑部省(警察庁のようなもの)は、人数は減っていき、実質的な長官もいない状況になってきます。

 

でも、現実問題としては、治安維持をきちんとやらないと世の中が乱れてきます。

 

平安末期がそんな状況に。平安京とは名ばかりに、都では強盗や略奪が横行。

 

ところが貴族は、そんな状況で治安維持をやりたくないので、本来の律令にはない役職「令外官(りょうげのかん)」である「検非違使(けびいし)」に任せたりします。

 

そして、都は、治安悪化ではあるけれど、まだ検非違使がいるので、良い方。

 

当時は中央集権で、地方には朝廷から国司(知事みたいなもの)が派遣されていたけど、都と違って検非違使を配置する余裕もありません。

 

朝廷には、そんなお金はなかったのです。

 

[荘園の誕生]

当時は、藤原氏をはじめとする貴族が、「荘園」をもっていました。

「荘園」とは、【脱税】の仕組みです。

 

当時の国有地である口分田は、農業をやっても税金(租庸調)が高くてやってられません。

 

ところが、貴族の私有地である荘園で農作をすれば、もっと収入が良かったりし

ました。

 

貴族は、「墾田永年私財法」で、新しく農地を開拓すれば、私有地になり、税金を納めなくてよくなるわけです。

 

これによって、口分田で耕作する人は減って、農地は荒れていきます。

一方、貴族は、どんどん農地を開拓して、荘園を増やして、もうけていきます。

 

税収は減って、都や地方で、強い治安維持をする組織をおく余裕もなく、治安があったしていったのが平安末期です。

 

例えば、黒沢明監督の映画「羅生門」

 

家のない人が、都の正門である羅生門の一部をはがして、焚火をするシーンから始まります。(芥川龍之介の原作とはやや違いますが)

 

京の治安は、そんな状況だったわけです。

そして、地方はなおさら。

 

国の財政は悪くても、荘園は広がって、貴族は裕福です。

中央ではうだつの上がらない貴族も、地方に流れて、荘園を持つことができるので。

 

ただ、荘園は都に持って帰れないので、貴族は地方に土着して有力地主に。

貴族は、ますます裕福になっていきます。

 

[武士の誕生]

でも、荘園を開墾して、私有地にできるのは、貴族・有力寺社のみ。

身分が低い場合、新たに田んぼを開拓しても、国のものとなり、高い税金をとられます。

 

そこで、身分の低いものは、悪い治安の下で自主的に武装しつつ、土地を開墾します。

乱暴者が跋扈する中では、武装してないと、土地を開墾しても強奪されてしまいますからね。

 

これが、武士の誕生です。

 

開墾した土地を貴族に形式的に寄付して、税金逃れをします。

 

こうした人たちが、武士になりました。

 

それでも、開墾した土地は、形式的には貴族のものであり、自分の土地にならないことが問題点でした。

 

そこで、土地を自分のものにするというのが、武士の悲願でした。

 

[源頼朝が武士の心をとらえた理由]

貴族とちがって、墾田を私有化できない武士は、土地を私有化したかった。

 

そこで、政治的発言権を求めるようになりました。

 

平家は、「平家にあらずんば、人にあらず」。

貴族にそまって、地方の武士の気持ちが分かりません。

 

そんな状況の中、源頼朝は流罪を経験し、下級武士たちの気持ちも理解します。

 

だから、武士の力を糾合し、勝利を収めることができたのです。

 

頼朝は勝利した後、朝廷に「守護」「地頭」を認めさせます。

 

「守護」は、頼朝にとっての反逆者である源義経の手配を理由に認めさせました。

貴族がやりたがらない地方の治安維持でもあるので、朝廷は、武士に任せてもいいか、となったのでしょう。

 

これで、正式な役職を手に入れて、政治的発言権を求める武士としては前進です。

 

そして、地頭。

 

地頭については、頼朝は、当時の朝廷の後白河上皇と直接のトップ会談で勝ちとっています。

 

地頭は、武士の悲願である土地の所有権が認められたのです。

 

しかも、地頭は日本の公的役職であり、その任命権を頼朝が獲得しました。

 

このため、全国の武士は、頼朝についていったのです。

 

(この他、朝幕併存についても書いてあります。)

 

続いて、第3章の紹介です。

 

【3章「近世 信長・秀吉・家康は日本をどうかえたのか」】

ここも内容が盛沢山なので、

 

「楽市・楽座と刀狩り」

 

について、紹介します。

 

[戦国時代の始まった背景]

戦国時代に突入する直接のきっかけは、応仁の乱です。

 

室町時代末期の応仁の乱では、日本全国の大名(守護大名)が中央政府である室町幕府のいうことを聞かなくなっていました。

 

ではなぜ、守護大名は中央に従わなくなったのでしょうか。

 

これは、鎌倉幕府と室町幕府の違いによります。

 

鎌倉幕府は、武士の土地所有と公的役職の獲得、政治的発言権の確保といった悲願を実現した源氏とその代理人である北条氏がはじめた幕府です。

 

一方で、室町幕府の足利尊氏は、たくさんいた源氏一門の一つで、元々は守護大名と家柄的には格段の違いがあるわけではありません。

 

つまり、同僚が将軍になったようなもので、状況が違ったら自分が将軍になったいかもしれないと思うものも多かったのです。

 

このため、鎌倉幕府と比べて、室町幕府では大名の将軍への従属意識が薄かったわけです。

 

このような背景もあり、室町幕府末期は、将軍家の後継争いなどもあって、大名は将軍の言うことを聞かなくなっていました。

 

そうすると、世の中は乱世です。

乱世では、治安が悪化します。

 

[宗教勢力とはどのようなものか]

さて、その頃の宗教勢力は、どのようなものだったのでしょうか。

 

当時の宗教勢力は、武装していました。

お坊さんなのに、武装してるんですね。

 

これは、当時の宗教勢力は、大きな利権を持っていたからです。

大きな利権は、乱世では、武装をしないと守れません。

乱世では、お金や財産を持っていると強奪されてしまいます。

それで武装したんですね。

 

では、宗教勢力の利権にはどのようなものがあったんでしょうか。

 

大きなものはライセンスです。

例えば、鎌倉時代では、明かりといえば「ろうそく」で、これは貴重品でした。

 

そのうち、中国から「えごま油」が入ってきます。

 

そして、宗教勢力である寺社は、油のライセンスをもっていたのです。

つまり、油を作るのも売るのも、寺社の許可が必要だったのです。

(当時は、通常、作る人と売る人は同じでした。)

 

当時、朝廷は力がなく、ライセンスを出す状況にない。

室町幕府は、公的な役職を決めていましたが、ライセンスを出してない。

 

このようなライセンスは、最初にモノを大々的に売り出した寺社が出していたのです。

当時の寺社は、知識層であり、また、中国への留学などにより、海外の最先端の技術情報をいち早く知ることで、例えば「えごま」を絞って油を作り始めます。

 

そして、その技術を「自分も作って売りたいから教えて」という人に教えて、ライセンス料や売上げに対する特許料金をとり始めます。

 

ライセンス料を払って油を作る一部の人たちは、寺社と組んで利益を独占するために、ライセンス料を払わずに自分の技術で作って安く油を売る者がいれば、プレッシャーをかけたのでしょう。

 

これが、寺社のライセンス独占による利権で、これにより、寺社は大きな財産を持つようになり、その財産を守るために武装もするようになりました。

 

そして、寺社と組んで独占事業を行う商人も、乱世で財産を守るために、武装します。場合によっては、独占事業を壊して安売りする改革者を殺してしまったかもしれません。

 

ということで、大きな利権、武力、独占商人を抱える寺社は、大きな力をもっていました。

 

[信長の楽市・楽座]

このような状態で、最も苦しむのは庶民です。

 

必要な物を買うのに、独占商人から買うので、大変であり、その利益は、商人や寺社に入って行きます。

 

それでは、庶民が自分で物を作ったり売ったりしようとしても、独占されていて、ままなりません。

 

また、当時は乱世なので、「関所」問題が大変でした。

 

なにか物を輸送する、あるいは自分が移動するのに、乱世なので、その土地土地の有力者が関所を作り、通行料をとるのです。

 

当時、淀川には、300もの関所があったそうです。

 

このような、

・物を作る

・物を売る

・関所の通行

のような、寺社、独占商人などの特権を廃止したのが、信長です。

 

これが、織田信長の「楽市・楽座」と「関所の廃止」なのです。

 

信長は、特権を廃止する代わりに、寺社に領地を与えることで、なだめました。

 

信長が全国的に支持されたのは、武力が強かったためだけではなく、このような庶民を苦しめる特権をはく奪しするという改革を行ったからなんですね。

 

[豊臣秀吉の刀狩り]

信長は、寺社が強大な武力をもって、政治的力をふるうことを回避したかったのです。

 

寺社を武力解除して、一方で、「天下布武」で、乱世における治安悪化を抑え、寺社や商人などが武装しなくてよい状況を作り出し、独占事業や関所を廃止する。

 

これが、信長の改革でした。

 

そして、続いて、秀吉が行った「刀狩り」。

 

「刀狩り」といっても、誰の武器を没収したのでしょうか。

 

武士は、戦うのが仕事なので、武士は「刀狩り」の対象ではありませんでした。

 

秀吉は、天下統一して、乱世でなくなったので、武装しなくても大丈夫であるとして、武士以外の武器を没収したのです。

 

武士以外とは、寺社、商人、地方の有力農民など。

 

信長と秀吉は、単なる武士ではなく、世の中の改革者ととらえることもできるんですね。

 

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長くなってきたので、「点と点が線になる 日本史集中講義」の紹介は、ここまでにさせていただきます。

 

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今回は、ここまでです。