今回は、2021年中学入試の出題傾向と対策(科目別)について、朝日小学生新聞で、SAPIX小学部の協力による特集が行われていたので、ポイントをまとめてみます。
1.算数
(傾向)
○コロナ禍で学習が遅れた受験生に配慮して全体的に難度が下がるかと予想されていたが、実際には、各学校とも例年レベルを維持
○新傾向の問題がいくつか見られた。
・「中央値」(2020年度から教科書に載るようになった分野)。次年度以降は出題が増える可能性あり。
・プログラム的な要素を含んだ問題。フローチャートの問題、ルールに基づき点を動かしたり、数を操作するといった問題。
・場合の数や作図を必要とする問題で、上位校を中心に難度が高いものが出る動き。
(例えば、桜陰の9マスに白黒の板を並べる問題など)
(対策)
○典型問題を範囲を絞らずに学習。近道はなし。
○難関校で出題されやすい、立体図形、場合の数、規則性を苦手にしないように。
○普段から、図・式を書くように。
2.国語
(傾向)
○文章の難易度は高止まり。
○説明文では、新型コロナ関連が目立った。
○例えば、慶應義塾普通部、早稲田、海城がコロナを正面からとりあげた。渋谷教育学園渋谷、芝、白百合学園、共立女子などは、コロナが浮き彫りにしたグローバル社会の脆弱性についての文章を出題。コロナで浮彫りとなった孤独感について考察した文章も複数校で出題。
○物語文では、「多様な他者」に寄り添う文章が出る傾向。例えば、一般的な男女や父母のイメージを揺さぶる人物が登場する「水を縫う」が再頻出。
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○物語文では、「大人の視点」から書かれたものも目立つ。
(対策)
○「常識」を身につける努力も重要。説明文では、社会的な出来事を扱うことが多いため、新聞、テレビ、両親との会話がますます重要。
3.理科
(傾向)
○問題文や表・グラフを読み込み、判断、分析する必要のある出題が目立った。
○物理分野では、豊島岡で、豆電球やLEDに流れる電流を求めるにあたって、典型的な計算問題ではなく、与えられたグラフのデータを読み取らなければ回答できない問題が出題。
○例えば、早稲田で、振り子の等時性が振れ幅が小さい場合でしか成り立たないことをデータで示して、それを利用して解答させる問題が出題。
○一方で、開成では、物体の重心の計算、巣鴨のてこ・ばね・滑車の組み合わせといった、難度の高い典型問題も出題。
○複数単元の組み合わせの出題も目立った。
○例えば、化学分野では、女子学院の中和と気体発生の組み合わせ。洗足学園の気体発生と水溶液の濃度の組み合わせなど。
○生物分野では、女子学院や渋谷教育学園渋谷で、サバクトビバッタの出題。開智、青山学院横浜英和では、新型コロナウイルスに関する出題。
○地学分野では、台風を扱った問題も出題。
(対策)
○基本的知識や典型問題の解法習得が最重要
○その上で、問題文、表・データから分析、判断する訓練を。
4.社会
○理科と同じく、資料読み取りやリード文を理解した上で、考察する問題が目立った。特に、上位校では、このような問題で、自分の力で考えられるか、自分の持っている知識を組み合わせられるか、が勝負の分かれ目になった。
○例えば、開成は、イギリスの選挙結果を元に、小選挙区制の特徴を考察する問題。駒場東邦は、古代の戸籍の性質を考えさせる問題。渋谷教育学園渋谷では、法隆寺の再建、非再建論争を考えさせる問題。
○自由、権利や国際社会に関することが例年以上に出題。
○例えば、聖光では、香港民主化運動との関連で自由が否定的にとらえられる状況についての説明を求める問題。米大統領選や各国の政治状況に関する出題も増加。
○SDGSについて、出題の幅が増えた。
○例えば、開成、桜陰では、「持続可能な観光」につながる「グリーンツーリズム」を答えさせた。早稲田では、「エシカル」をキーワードに出題。ジェンダーギャップを取り上げたフェリス女学院。
(対策)
○テキストや参考書以外にも興味を持つことが必要
○親や塾の先生との会話などをきっかけに、疑問や関心を広げていく姿勢が重要
今回は、ここまでです。