昨日の三省堂書店の記事で少し書いたのですが、おばばは高校生の頃、お茶の水にある塾に通ったことがありました。
昔のこと過ぎて、身バレもないと思うので書きますが、駿台予備校のお茶の水校舎です。
駿台予備校は、名前は「予備校」となっていますが、昼間の浪人生用のコースの他に、夜は現役の高校生用のクラスがありました。
当時は、駿台予備校、河合塾、代々木ゼミナールの3つが三大予備校と呼ばれていたと思います。
調べてみると、今は、駿台予備校、河合塾が二大予備校となっていて、生徒数では東進に抜かされているようですね。
そんな駿台予備校の授業の中でも、今でも覚えているのが、先生方の雑談です。
塾の先生の力の一つが、面白おかしく話を聞いているうちに様々な知識も定着させてしまう「雑談力」だと思うのですが、今でも思い出せるくらい、印象に残ったお話がいくつもありました。
1年も過ごすと、先生ご自身の人生経験、生き方、思想のようなものまでむき出しとなり、ありったけを注いで、生徒達と向き合って下さっていたのだと思い至ります。
今もふと、思い出したのですが、日本史の先生が「たけのこ生活」と口にされて、ほとんどの生徒がそれが何か分からずにポカンとしていますと、「あれ、君たちは『たけのこ生活』って知らないの?」「はい、『たけのこ族』なら聞いたことあります。」というやり取りとなり、「へえ。最近の若者は『たけのこ生活』を知らないのか!これは、驚いた!」と言われたことがありました。
ちなみに、たけのこ生活とは。
筍の皮を一枚ずつ剥ぐように、家計困難のために衣類やその他の持物を少しずつ売って生活費とし、ようやく食いつないでいるくらし。 特に、第二次世界大戦直後の窮乏生活の状態をいう。(コトバンクより)
そんな「たけのこ生活」の話の後に、その先生はかなりの年配の方だったのですが、
「昔は、『質屋と予備校の入り口は横丁にある』と、言われたもんです。正面堂々入りにくいという事ですね。
ところが今はですよ。
僕の親戚のお嬢さんが、〇〇大学に通っているんですが、就職をするっていうんで、就職課に来ている求人を色々見ていてですね、〇〇商社、〇〇銀行、なんて間に、駿台予備校の事務がある、ああこれもちょっといいんじゃないという感じらしいんですね。
いやあ、隔世の感があります。」
と、話されたことがありました。
もう当時は、駿台予備校と言うのも三大予備校の一つで、入り口は堂々と公道に面していましたし、おばばにもピンとくる話ではなく、へえ、昔はそうだったのかという感じでありました。
当時の高校生だったおばばの接する大人は、両親、学校の先生というのが主ですが、そんな中で駿台予備校の先生方というのは、何だか異彩を放っていて、強烈に印象深い大人たちでもありました。
影響面でいうと、一番、影響を受けたのではないかと思える程です。
学校の先生と言うのは、どうしても指導面での責任もありますし、事務的な仕事も多いでしょうから、また立場も違うのかもしれませんが、駿台予備校の先生方は、正に勉強を教える事だけが仕事で、初めて子ども扱いせずに向き合ってくれる大人であったように思います。
そういう大人の方と接することで、考え方とか、興味とか、将来の職業観とか、世の中を見る時の物差しとか、色々なものに「幅」が出てくるのではないかと思います。
そんなおばばの息子も、この春、中学生となります。
息子の接する大人というと、一番身近では両親であるおじじおばばということになります。精一杯頑張ってはいますが、こんなもんです。
学校の先生はというと、今年は受験学年でしたので、どうなることやらと心配してましたが、子ども思いの良い先生に恵まれて、温かい大きな器で学級を包んで下さり、受験学年とは思えない本当に充実した、活き活きとした楽しい1年間となり、これはもう、感謝しかありません。
そんな学校の先生と同じくらい、今年1年間の息子に影響を与えて下さったのが、塾の先生方であったと思います。
保護者会も多く開催されたので、息子を受け持って下さった先生方は4教科とも面識がありますが、お世辞抜きで、どの先生も熱心で、人としての魅力も素晴らしさもあり、これは本当に恵まれたことだと思いました。
中学受験マンガ「二月の勝者」で、桂先生が、塾の先生というものは、受験期という一番アツい時間を一緒に過ごして、生徒達と苦楽を共にしたのに、受験が終わるとハイサヨナラとなってしまう、因果な商売だというようなことを話したシーンがあったと思います。
(画像はお借りしています。)
今年の、1月末。
受験直前に、壮行会というのがあって、コロナ禍でZoomで行われたので、息子が参加する傍ら、離れて聞くことができました。
ここでの、各先生方のお話はもう、おばばも今後ずっと忘れることができないのではないかと思います。
1年間の勉強と挌闘と、数年にわたる受験勉強の全てをかけて、これから数日間の戦いに立ち向かう子ども達に向けて、先生方は、思いの全てを画面からぶつけて下さいました。お一人お一人の生きざまのようなものまで伝わってくる、すごい時間でした。
息子が話していた先生方のお話、授業でのエピソード、それ等を話す時にいつも浮かべる楽しそうな息子の表情も、この先生方に支えて頂いたのだと、柱の陰で涙が止まらなくなりました。
今回は、ここまでです。