以前、母と叔父(母の弟)が、「この頃は、本が読めなくなった。」と話しているのを聞いたことがありました。
若い頃はあんなに好きだった本が読めなくなった、と。
若かったおばばは二人の話を聞きながら、そんなことがあるのだろうかと不思議に思っていました。
が、気がついたら、自分もそうなっていました。
本を読むための体力というものがあるとするならば、めっきりその体力が落ちてしまいました。
年齢によるものなのか、生活によるものなのか、手軽なインターネットが側にあるからなのか、分かりません。
受験ブログを書かれている保護者の方でも、読書家の方は多くいらっしゃいますから、年齢ではないのかもしれません。
作家の林真理子さんが、母校である日本大学の新理事長に就任されるというニュースを知り、そんなことを思いました。
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林真理子さんがコピーライターとして活躍された後に『ルンルンを買っておうちに帰ろう』で華々しくデビューされたのは1982年のこと。
おばばもそうですが、受験生の親世代では、リアルタイムでは当時を知らない方が多いことと思います。
赤裸々な思いを軽快な文章で綴ったエッセイは、今でこそ、時々目にするタイプのエッセイではありますが、当時、女性が「ねたみ・そねみ・嫉妬という負の感情」や「ありのままの欲望」を公開する文章として書くことはあまりなく、当時の林さんの若さも相まって、衝撃をもって受け止められたそうです。
音楽を聴くと、その音楽をよく聴いていた頃を思い出すということがありますよね。
本にも、そういうところがあるのかもしれません。
おばばが、林真理子さんをよく読んでいたのは、新婚の頃です。
我が家はやや早めの結婚で、しばらくはDINKs状態でした。
おじじが激務で忙しい中、おばばは仕事帰りに本屋へ寄って、林真理子さんのエッセイや小説の文庫本を買い、カフェで夕飯を済ませながらそれを読むのが、当時、何よりの寛ぎの時間となっていました。
林さんの作品には、都会の大人の男女の恋愛の機微がよく描かれています。中学受験生男子には、かなり厳しいやつですね。。
コピーライターとして、流行作家として、華やかな世界に身を置かれていた林さんならではの作品ですが、デビューから10年ほど経ってからは、歴史上の人物を描いた小説も多く書かれています。
現代の作家の中でも、群を抜いて多作の方ですが、その中で一つだけ、特に好きだった作品を挙げるとするならば。
ご自身のお母さまをモデルにした「本を読む女」という小説です。
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価格:682円 |
"本"が大好きで、どんなに辛い時でも傍らには"本"があり"本"を心の支えにしていたという主人公の女性が、時代に流されながらも本を読むことを支えに生きていく姿が、淡々とした文体で描かれています。
派手な出来事も事件もないけれど、心に残る作品でした。
林さんは、今回の就任にあたり、「(日大の)マッチョな体質を改革したい。」と仰られたそうです。
初の女性理事長となられたことは勿論ですが、型破りなエッセイをひっさげて登場し、文壇を華やかに生き抜いてこられた林真理子さんの挑む日大の改革と、これからの日大に、期待をしています。
今回は、ここまでです。