今回は、「暗号資産(ビットコイン:BTC)は、いつ量子コンピューターに解読されるのか?」についてです。

最近は、量子コンピューターが急速に発展しているそうです。
そして、将来、量子コンピュータの性能が向上して、現在の標準的な方式の暗号(「RSA(素因数分解を活用した暗号方式)」や「ECCやECDSA(楕円曲線暗号)」と呼ばれる方式)を解読するようになる日が、Qデイ( Q day)とも呼ばれているそうです。
(ビットコインはECDSA暗号を採用)
ちなみに、「Qデイ」の「Q」は量子を意味する「Quantum」から取られています。
それでは、心配されている「Qデイ」が訪れると、どのようなことが発生するのでしょうか?
現在の標準的な暗号方式(RSAやECC、ECDSA)は、通信、金融などで広く使用されているので、もし「Qデイ」が到来して、量子コンピューターで暗号が解読されるようになると、政府や企業の機密は漏洩するわ、クレジットカードなどで管理されている金融資産が盗み放題になるわで、世界中で大混乱が発生するのでは、と心配されているのです。
そして、ビットコイン(BTC)などの暗号資産も、「Qデイ」が来れば、簡単に盗取できるようになるので、その価値が暴落するのでは、との心配も暗号資産コミュニティにおては懸念されている訳です。
それならば、量子コンピューターのリスクについては、
「「Qデイ」は社会全体に関わる問題なので、暗号資産だけ心配することもない。社会全体でなんとかすることになるのでは?」
とも思えます。
ところが、必ずしもそうでもありません。
「Qデイ」は量子コンピューターの発展に伴って訪れるかもしれませんが、この発展は、ある日急に訪れる訳ではありません。
量子コンピューターの性能向上は、急速といえども、段階的に向上していくものなので、徐々に「Qデイ」が近づいてくる状況が把握できるのです。
そして、米セキュリティ企業の専門家の間では、「Qデイ」は2030年代か、それ以降とする見方が大半だが、確定的なことは分からない。そして、米国などでは、量子コンピューターでも突破できない耐量子計算機暗号(PQC)の開発が行われているそうです。
(ITmediaNEWSより)
そうなんですね!
そしたら、2030年代までに、耐量子計算機暗号(PQC)が完成すれば、社会全体も安心だし、暗号資産(ビットコイン)も安心なんじゃないですか!
と思ってしまいます。
ところが、そう単純ではないかも。
実は、暗号資産(BTC)には、主に3つ心配な点がありそうです。
①「Qデイ」は、2030年代との見方が多いとのことだが、2030年代といっても幅が広すぎる。2030年と2039年とは大きく違う。そして、仮に、2030年に「Qデイ」が訪れて、その時に耐量子計算機暗号(PQC)が完成してなければ、大変なことになるのではないか?
②また、仮に「Qデイ」の到来時に耐量子計算機暗号(PQC)が完成していたとしても、暗号資産は分散型のブロックチェーンであり、全体の管理者がいないので、PQCを導入できないのではないか?
③そして、「Qデイ」が訪れる前の段階でも、「Store Now, Decrypt Later(今盗んで、後で解読する)」との攻撃が危険なのではないか?
(現在のビットコインの中にはは、「公開鍵」と呼ばれるものがオープンになっている長期間取引のない休眠しているものも存在する。また、ビットコインの取引(トランザクション)時間は約10分間であるが、その間にオープンにされる「公開鍵」を盗み出すことができたとすれば。そういった「公開鍵」を貯めておいて、「Qデイ」以降に暗号解読を行えば、ビットコインが盗取されてしまうのではないか、との懸念)
この3つが、主に量子コンピューターのリスクとして考えられるようです。
それでは、このような状況で、
「暗号資産(ビットコイン:BTC)は、いつ量子コンピューターに解読されるのか?」
について、ある程度の根拠を持って説明をしていこうと思います。
それには、次の2つの点を検討するのが良いように思います。
(検討事項1)「Qデイ」は、いつになりそうなのか?
(検討事項2)「Qデイ」の到来までに、耐量子計算機暗号(PQC)がビットコイン
(BTC)に導入されることで、先に書いた①、②、③の心配を解決するのは可能なのか?
そして、「(検討事項1)「Qデイ」は、いつになりそうなのか?」については、量子コンピューターの専門家の意見を参考にするのが妥当ではないかと思います。
なぜならば、量子コンピューター技術は非常に専門的であり、内容を理解可能な人が極めて限られているから、専門家でない方の予想の信頼性は高くない、と考えられるからです。
そして、ここで参考になるのが、日本における量子コンピューター研究の第1人者である大阪大学の藤井啓祐教授です。
YOUTUBEのPIVOT公式チャンネルの
「ゼロから学ぶ量子コンピューター ビットコインは終わるのか」
Westin OYM 15 JP Day Master 16x9 PAL H264
において、大阪大学・藤井啓祐が解説をされていました。
その中の暗号資産への量子コンピューターのリスクや「Qデイ」に関する部分を分かりやすく説明しますね。
・量子コンピュータの計算能力の指標は「量子ビット」という数で表される
・これまで、100万量子ビットで暗号資産(BTC)の暗号解読が可能と言われてきたが、2026年3月にグーグル社は、2029年までに100万量子ビットの量子コンピューターを開発するロードマップを公表している。つまり、2029年までに「Qデイ」が来る可能性がある。(注:これは、2026/4/3日経XTECHの記事)
・現在(2026/8)の最高性能の量子コンピューターは、IBMの【156量子ビット】のものと言われている。
(以下、大阪大学藤井教授の話)
・20量子ピットと40量子ビットでは、計算能力が全然違う。指数関数的に能力が急上昇する。2の20乗と2の40乗の違い位違う。
・大事なのが、10量子ビットの量子コンピューターが2つあるだけでは、20量子ビットにならない。(その2つに「量子もつれ」を起こさせないと20量子ビットにならにない。「量子もつれ」を起こさせるのが非常に困難。)
・30量子ピットの量子コンピューターは、そこまですごくない。ノートパソコンでもシミュレーション可能
・ところが、40量子ビットの量子コンピューターをシミュレーションしようと思うと、日本最高のスーパーコンピューター「富岳」でぎりぎり実施できるほどの性能になる。
・30量子ビットと40量子ビットの差はもの凄く大きい。ノートパソコンとスーパーコンピューター富岳(一時は世界一の性能を誇り、現在でも、計算分野によっては世界2位。開発費は1100億円)の違い位である。
・暗号資産の解読には100万量子ビットが必要
・そうなるまでには、まだまだ時間がかかる。大丈夫。
・また、世界的企業は、5年後、10年度に100万量子ビットの実現を目標にしているが、仮定の話として、100万量子ビットが実現するとしても、その量子コンピューターを暗号資産解読に使用する状況にはならない。
量子コンピューターのトップ研究者、大阪大学藤井教授の話は、こんな内容でした。
これは分かりやすいですね。
現在の商用の量子コンピューターの世界最高性能が156量子ビット!
(研究用コンピュータでは、256量子ビットもあるそうです)
暗号資産解読には、100万量子ビット!
(50万量子ビット未満で可能との研究もあり)
その性能の違いは、2の(100万ー156)乗!
2のべき乗数って途轍もなく大きい数字になりますよね!
例えば、紙を48回折り曲げる(2の48乗)ことができれば、その厚さは38万kmになり、月まで届くそうです。
でも、48乗どころではなく、現在の最高性能のIBMの商用量子コンピューターの2の(100万ー156)乗の性能なんて!
20量子ビットを40量子ビットにするだけで、ノートパソコンと世界的性能のスーパーコンピューター「富岳」との差があるのに!
世界的企業の5年後に100量子ビットを達成目標って、これは、確かに実現不可能でしょうね!
今から10年経過しても無理だと思います!
しかも、仮定の話として、世界的企業が10年後に100万量子ビットを作ったとして。
世界的に非常に非常に貴重なコンピューターになる訳でであり、アクセス可能な人や使用目的は、極めて限定されるに違いありません。
藤井教授のおっしゃる通り、犯罪者が暗号資産解読に使えるようなものでは無い訳ですね。
ということで、世界的企業といえども、100量子ビット達成には、10年は要すると考えられます。
まして、犯罪者が暗号資産解読に使える位の商用の量子コンピューターが実現するには、15年~20年位はかかるでしょう。
ということで、
「Qデイ」は、15年~20年後以降
になるでしょう!
それでは続いて、
(検討事項2)「Qデイ」の到来までに、耐量子計算機暗号(PQC)がビットコイン
(BTC)に導入できるのか?
に行きます。
こちらは簡潔に。
暗号資産は、分散型のブロックチェーンを使っていて、中心となる管理者はいませんが、
【「Qデイ」の到来までに、耐量子計算機暗号(PQC)をビットコイン(BTC)に導入することは十分可能】
です。
というのも、今年(2026年)8月から、ビットコインのハードフォークが実施されるからです。
これがBTCコミュニティに支持されるかどうかは分かりませんが、技術的にはハードフォークの実施が可能であることが示されることになります。
これはつまり
【もし、耐量子計算機暗号(PQC)が完成すれば、ハードフォークを使うことで技術的には可能である】
ことが示される訳です。
ということで、結論としては、次の2つです。
【100量子ビット達成には、10年は要する。まして、犯罪者が暗号資産解読に使える位の商用の量子コンピューターが実現するには、15年~20年位はかかる。
ということで、「Qデイ」は、15年~20年後以降】
【「Qデイ」の到来までに耐量子計算機暗号(PQC)が完成すれば、ビットコイン(BTC)に導入することは十分可能】
そして、この2つを考え合わせれば、暗号資産(ビットコイン)への量子コンピューターのリスクは心配するに当たらない、という結論になると考えます。
今回は、ここまでです。
