今回は、早稲田大学の田中愛治学長の「日本の大学の未来への提言」についてのインタビューです。(大隈講堂の写真はWikipediaより)
このインタビュー内容は、エコノミスト(2023/3/7号)の記事にあったものです。
田中早大学長のインタビューのポイントは、こんな感じです。
(ポイントを短くまとめるとともに、田中学長の考えをおばばなりに受け止めて、言葉を若干変更している部分があります。)
(聞き手)日本の大学と世界の一流大学との差がますます広がっているのではと懸念してます。
(田中学長)資金力の向上は不可欠です。
世界大学ランキングをみると、大学の実力と資金力には相関関係があります。
ハーバード大(世界ランキング3位)の運用基金額は4.3兆円で世界1位。スタンフォード大(世界ランキング2位)の運用基金額は世界3位。
早稲田大の運用基金額は約1500億円
資金力がないと、最新鋭の研究機器も購入できない。
海外の優秀な研究者の獲得できない。
優秀な研究者を招こうとしていたら、給料2倍、授業負担半分のアジア上位大学に行ってしまたこともありました。
(聞き手)どのように資金力を高める戦略ですか。
(田中学長)寄付金等を原資とする基金の運用に限定して、低リスクな運用から、ミドルリスクミドルリターンを開始しました。
また、コロナでバイトもできなくて困窮した学生への支援のために、卒業生などに1人1口で1万円の寄付を募りました。
1年間で10億円が集まりました。
後輩が困ってるのなら何とかしたいという卒業生の温かいメッセージと感じました。
早稲田大学初のVC(ベンチャーキャピタル)も創設しました。
量子コンピュータやダイヤモンド半導体の会社に出資しています。
こうした会社が利益を上げるようになると、長い目で見ると、大学に資金的なメリットとなります。
(聞き手)資金力がないと、学生獲得は難しいですか。
(田中学長)決して、そうばかりでもありません。
いかに効果的な教育をするかか大事です。
現在5万人の早稲田学生のうち、1万人を海外からの学生にしたい。
(現在、約8500人)
そのため、海外の学生が、英語で学位をとれるようにします。
日本人学生も、3、4年次には英語で学んでもらうようにしたい。
(聞き手)日本の大学入試の問題点は何ですか。
(田中学長)戦後、日本は、欧米、特に米国に追いつくことを目標としてきました。
その中で生まれたのが、答えのある問題を如何に早く、正確に解くかといった受験です。
ところが、今、日本は、「海図の無い航海」に出ているのです。
「問題解決型」の教育と言われてきましたが、日本人は日本人の教育をどうするかを見いだせていないように思います。米国に追いつくことに代わる次の答えを、日本人自身が自ら考えて、その上で教育の方向性を見出すべきです。
理系文系の区別も日本だけで、ダメにしている原因の一つです。
(聞き手)政治経済学部の入試で、数学を必須にしたのが話題です。
(田中学長)それだけでなく、共通テストを、基礎学力を見るために活用しました。政治経済学部で学ぶために必要な考え方を判断するためです。
数学を取り入れたのも、その一環です。
(聞き手)将来目指す大学の姿は。
(田中学長)2040年までに日本で最も学ぶ価値がある大学、2050年までにアジアで最も学ぶ価値がある大学が目標です。
偏差値やノーベル賞の数でもなく、企業のトップの数、国連や外資系企業での活躍ということだけでもない。
小さな町村の長でもいいし、地方新聞の敏腕記者でもいい、NPOのリーダーでもいい。グローバルな視野を持って、社会のために活躍するなら、東大より早稲田で学ぶ意味がある、といった大学でありたいと考えています。
(インタビュー以上)
早稲田大学学長の考える課題は、日本の大学全体の課題であり、また、世界の中で日本人が今後どのように戦っていくかについての課題なのですね!
特に、「米国に追いつくことに代わる次の答えを、日本人自身が自ら考える」べき、との部分が印象に残ります。
日本人一人一人が自問して、自分なりの考えをまとめ、それに向かって取り組んでいくことが、日本人全体の幸せにつながっていくような気がしました。
今回は、ここまでです。