今回は、海外ショートサスペンス(おばば訳)の第2話です。
(©RITRIP)
まだ、第1話を読まれていない方は、まずはこちらからどうぞ。
それでは早速、第2話スタートです!
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そして、一呼吸置いて、父親はモリスに尋ねた。
「だが、お前はもう3つの願いをしたのなら、それはもういらないんじゃないか?なんでずっと持ってたんだ?」
「気まぐれみたいなもんだ。売ろうかとも思ったが、もうやめた。これのお陰で、おれは不幸になった。もう十分だ。あと、買うやつだっていないだろう。作り話と思われるのがおちだ。もしかしたら何かあるかもと思うやつだって、願いがかなってからでないと金を払いたくないだろうしな。」
「仮に、追加であと3つの願いができるとしたら、やってみたいか?」
「分からないな。本当に分からない。」
モリスはそれを手に取っていじっていたが、突然、暖炉に投げ込んでしまった。
父親は、小さく叫び、かがみこんでそれをひったくるように取り出した。
「そんなのは、燃やした方がいい。」
「もし、お前がいらないんなら、おれにくれ!」
「あげるつもりはない。おれは、暖炉に投げ捨てたんだ。お前が自分でひろうのは勝手だが、何があっても知らないぞ。暖炉で燃やしちまうのが一番いいんだ。」
父親は首を横に振って、手にしたそれをチェックしている。
「どうやって使うんだ?」
「右手でかかげながら、声を出して願えばいい。だが、やめておけ。」
「アラビアンナイトみたいですね。私が8本の猿の手を貰えるよう、願い事をしてほしいものね。」母親が立ち上がって夕食を準備しながら言った。
3人の家族は笑ったが、モリスは険しい目をして父親の腕をつかみ、強い声を出した。
「もし願うなら、絶対に“まともな願い”にしておけよ!」
父親は、それをポケットにしまい、モリスを夕食のテーブルに促した。
皆で夕食をとるうちに、呪物のことは半ば忘れられて、家族はモリスのインドでの冒険話の続きのとりこになっていた。
そして、来客が最終列車に間に合うように帰っていくと、父親はいった。
「猿の手の話だって他のモリスのたわけ話と同じで、本当な訳はないさ。まともに考えなくていいんだ。」
「まさか、期待したりしてないでしょうね?」と母親。
「ほんの少しだけ、何かあったりしないかな。」父親は少し顔をあかくした。
「モリスはあれを欲しがらなかったし、自分にも捨てろといったしね。」
「何かあるかもよ。」と、呪物にびびっているふりをして息子はいう。
「金持ちの有名人になって、幸せになったらどうかな。そうだ、まずは、王様になるのを願ってみたら、父さん。そうすれば、お母さんの尻に敷かれなくなるよ。」
息子は、追いかける母親からテーブルの周りを逃げ回った。
父親は、猿の手をポケットから出して、疑わしそうに見つめていた。
「何を願っていいか分からないな。それこそ、ほしいものはもう持ってるってことなんだろうな。」
「家の中を片付けてもらって隅から隅まできれいに掃除してもらえるなら、すごくハッピーだよね。だから、200ポンドをお願いしてみたら。それだけあれば、やってもらえるしね。」
父親は、信じやすい自分に照れ笑いしながら、呪物をかかげて、息子が真面目な顔で座りながらも母親にウインクするのに少し傷つきながらも、まさに願いごとを唱えてみた。
「200ポンドが欲しい!」
すると、大きなピアノのような音がするとともに、父親は震えながら叫び声を上げた。
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以上が、第2話です。
第3話以降も楽しみにしていただけると、嬉しいです。
今回は、ここまでです。