今回は、外来種の命を奪っていいのか、についてです。
日本固有の生態系を守るために、外来種の駆除のために、その命を奪うことは、けっこう行われているようです。
けれども、この外来種の命を奪う行為を子どもに、どうやって伝えればいいのか、という議論があるそうです。
朝日新聞(2023/8/30)に、そんな記事が載っていました。
今年の4月
多摩川で生き物観察ガイドをしている川井希美さん(39)がSNSで発信
「本心としては外来生物の防除(おばば注:駆除の意味)作業に子どもを関わらせたくない。」
こんな投稿をしたのは、川井さんがショッキングな経験をしたから。
生き物観察ガイドで、小学校低学年の子ども達にアメリカザリガニを見せた時
「こいつらは殺してもいい!」
そんな声が聞こえた。
「駆逐してやる」とアメリカザリガニを踏みつぶす子どももいた。
アメリカザリガニは、北米原産で元々日本に住んでいない。
日本の生態系を壊す侵略的外来種として、各地で駆除が行われている。
「手軽な環境教育として外来種の駆除が使われることもある。
だけど、本来、生き物の命に善悪はない。外来種かどうか、といった、短絡的な基準で命を軽視してよいのか。」
と川井さん。
朝日新聞では、子どものカウンセリングに取り組む徳田教授の言葉も紹介してました。
「『駆除』という行為と、『命は大切に』というメッセージは、正反対のように感じられ、小学校低学年の子どもには、おそらく理解できない。」
徳田教授は、そのような駆除が、子どもの意識において「命の選別」につながることも危惧しているそう。
なかなか、簡単じゃない問題、なのではないでしょうか。
そもそも、子どもが段々と生物に直接触れる機会が少なくなってる中で、侵略的外来種の駆除って、生き物の命を奪うという意味でインパクトが強いし、そのせいで、悪い生き物は殺していい、との単純なイメージが子どもに刷り込まれるとしたら、問題なのかもしれません。
侵略的外来種の駆除の必要性を十分に説明すること、これが必要なのかも。
つまり、やむなく駆除を行うんだけれども、それでも、外来種にも命があり、その重要性は減るものではないけど、他に手段がないので、駆除せざるを得ないことを、丁寧に説明するってことかも。
「外来種の命を奪ってもいいのか?」
答えは単純に「YES」のように思えて、そう単純な問いでもなさそうです。
これを読んで、「ウミガメ」を殺した漁師の話を思い出しました。
「沖縄県久米島で、首に刺し傷のあるウミガメが30匹以上、瀕死の状態で見つかった。漁師の一人が漁網から取り除くために傷つけた、と話している。」
これについて、「TURINEWS」(釣りニュース)では。
「ウミガメは、世界中で愛される絶滅危惧種。一方で、ウミガメは、漁師にとっては、多大な漁業被害をもたらす『害獣』としての側面がある。」
「ウミガメによって、漁網が破られることで魚がとれなくなったりする。」
これも、難しい問題のように感じます。
単純に、「貴重でかわいいウミガメを殺すなんて、その漁師は許せない!」で済む訳でもなさそうです。
やっぱり、動物や植物の命についても、単純な善悪のレッテルを貼って命の選別をするのは良くないのでしょうね。
ちなみに、外来種の駆除やウミガメの刺殺なんかも、中学受験の題材になる可能性もあるかもしれません。
今回は、ここまでです。